「現場での状況を判断する(例:耳などの身体的なトラブルを起こしたお客 様がダイビングを継続できるかどうか、判断するためのアドバイス)。」 メンバーの皆さんは、ダイビングの現場で何らかの身体的なトラブルが起きたお客様を経験されたことがあると思います。ファインダイブもそうですが、特に講習の時には継続可能かどうか迷うこともあることでしょう。ここでは重症ではない、よくあるトラブルに絞って解説します。一番多いトラブルは耳抜きです。耳抜き不良を自覚されたお客様がいらした場合、潜水中であれば、水深を一度上げるなどの工夫でその後問題なく抜ければ、エキジットを必要とする状況とは考えにくいです。何度か努力しても抜けないときや、ひどく痛みを訴えられていたら、ピンホールや内耳窓破裂などの大きなトラブルが起きる前に、一度エキジットさせましょう。地上で少し休んだ後、ティッシュで作ったこよりで外耳道の水を取り除いても、水がとれないような、膜が張ったように耳の聞こえが悪いという症状があれば、耳抜き不良のために中耳気圧外傷を起こし、中耳腔に出血したり浸出液がたまった可能性が高く、この場合1〜2週間程度は潜水禁止となります。その後の潜水計画は中止して専門医にかかることをおすすめしてください。また、聞こえには問題なくても、地上で耳抜きができなければ、やはり中止しなくてはいけません。聞こえがよく、地上で耳が抜けている場合のみ再度チャレンジすることができます。次に鼻血もよくあるトラブルです。この場合、サイナススクイーズやサイナスリバースブロックが起きなかったかどうかをよくお聞きください。サイナスの痛みがなかったのであれば、元々アレルギー性鼻炎がある場合や、耳抜きの際に鼻をつまみすぎて起きる鼻の入口(キーセルバッハ)の鼻血です。耳抜きが悪い場合には鼻を強くつまむのでよく見られますから、耳抜きはどうであったかを合わせて聞いてみましょう。キーセルバッハの場合、よほど鼻血が続かなければ問題ありませんが、サイナスの痛みを伴った場合には潜水中止です。また、関節痛、腰痛などは万一減圧症であってはいけないし、たとえ使い過ぎや捻挫などが明らかでも、痛みがある状態での潜水は中止すべきです。エキジット後に頭痛を訴えられたお客様がいらした場合、30分程度の安静休息で回復するようでしたら酸欠であったと考えられますので、ゆっくりと大きく呼吸することを強調して再度潜水させてみてください。短時間に回復しない場合には、風邪や寝不足、二日酔いなどの体調不良であったり、サイナスのトラブル、減圧症などが考えられますので、中止する方が無難でしょう。

「透析患者さんのダイビング」 ショップのお客様で人工透析をするようになってしまった、 ダイバーがいるとのことです。この方は人工透析をする前からダイバーだったらしく、今後もダイビングは続けたい希望があるようです。もちろん、普通に考えても人工透析をする方がダイビングはしない方がよいこともドクターストップになりそうだとわかっているようですが、しかし、実際に人工透析を受けている方で ダイビングを続けているダイバーがいるのか、知りたいとのことです。私の今までの経験ではいないですし、知り合いのインストラクターからも聞いたことがありませんので・・・・。 人工透析は、患者さんの状態によって週に1〜3回、1回に数時間かけて体内の老廃物を血液中から取り除く治療です。透析患者さんにはいくつかの問題点があります。まず、貧血が強いかどうかということです。透析患者さんは腎臓で作られる造血物質を作る力もなく、腎性貧血がよく認められます。最近ではこの物質を投与することによって貧血を補正するのですが、血の気が多いと透析しにくいため、わざと貧血でも放置する傾向にあります。ですから透析の主治医と相談して普段の値を高めに設定してもらうといいかもしれません。次に、出血傾向が強いかどうかです。血液を透析の機械へ通すときに、血液が固まらないようにする薬を使います。この結果、出血が止まりにくくなりますので、鼻血や気圧外傷には注意が必要になるわけです。この場合も主治医と相談して、ダイビングの前は出血しにくい透析液を使ってもらうのも一つの方法でしょう。また、免疫不全状態にないかどうかです。透析患者さんは往々にして免疫力が落ちています。免疫不全が強い場合には、わずかな風邪が肺炎に進展する、中耳炎が髄膜炎に原因になるなどの事があるために、感染症には注意が必要になります。さらに、透析している方はどうしても心臓に問題がある人が多いのです。特に、糖尿病から腎不全になった方は心血管系もやられていることが多いので、あまりお勧めできません。これも主治医と相談ということになります。最後に、透析が長期に及ぶ人は骨がもろくなり、骨折をしやすくなる人もいます。以上のいずれの注意点にせよ、これらの状態は病状の重さや程度によって個人ごとに異なるわけですから、主治医の先生に、日常生活やジョギング、スイミングなどのスポーツ活動上に制限がないかどうかをお聞きすれば、ダイビングもこれに準じますので、ダイビングの可否が判定できます。事実、透析をうけている方のダイバーは多数実在します。また、水中の高圧下では利尿作用が働くことが知られており、むしろそのような観点からはダイビングは推奨されることになるわけです。