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 睡眠時無呼吸症候群とは、文字の通り、「寝ている間」に「呼吸が頻繁に停止」する病気です。英語ではSleep Apnea Syndorome(SAS)といいます。日本では2003年2月に山陽新幹線の運転士が居眠りをしオーバーランをおこした事故で広く知られるようになりました。

 「一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこるか、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上の場合。」に睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndorome)と診断されます。

 睡眠時無呼吸症候群は人口の3〜4%と推計されています。中高年層の一般市民で9%とのデータもあります。いずれにしても決して珍しくない病気です。しかし医療機関を受診しきちんと診断を受けている人はごくごく少数で、ほとんどの睡眠時無呼吸症候群のかたは診断・治療をうけることなく放置しているのが実情です。

 睡眠時無呼吸症候群は睡眠中酸素不足になりやすいため、日中の眠気や集中力不足に陥りやすく、交通事故など多くの重大事故の原因となることもあります。高血圧をはじめとするさまざまな病気の引き金となります。精神不安定などの症状が現れることにももあります。重度の例では呼吸困難になり死を招くことさえもあります。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群のほとんどは「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」といって鼻や咽喉(ノド)に何らかの異常があり、気道が狭いことが原因でおこります。呼吸中枢の異常による「中枢型睡眠時無呼吸症候群」というものもありますがまれです。

 閉塞型睡眠時無呼吸症候群の原因としては3つほどあります。一つめは「形態的異常」で、顎が小さい、下顎が後退している、舌が大きい、軟口蓋が低い、扁桃が大きい、アデノイドが大きいなどです。二つめは「機能的な異常」で飲酒・睡眠薬などの薬剤・加齢・脳卒中後遺症などの影響で上気道の筋肉が活動低下することです。最後は肥満です。肥満だけでは睡眠時無呼吸症候群は起きませんが、他の要因があると睡眠時無呼吸症候群を発症させたり重症化させます。

睡眠時無呼吸症候群の症状

  夜間の症状:大きな習慣性のいびき、睡眠中の呼吸停止、寝相の悪さ、

        寝汗、頻繁な覚醒と排尿、時に不眠(中途覚醒)など

  日中の症状:著しい眠気、全身倦怠感、慢性的な根不足感、朝の頭痛、

        集中力の低下、性格の変化(切れやすくなる)、

        インポテンツなど


 ただしこれらの症状のうち全てがそろうことはまずありません。この中で特に重要な症状は「いびき」と「日中の眠気」です。

いびきと睡眠時無呼吸

 いびきは睡眠中に上気道が狭くなり、そこを空気が通るときに振動して生じる音です。いびきをかいていると一見熟睡しているように見ます。しかし実際には気道が塞がり空気の通りが悪くいびきを発生しているため、呼吸が抑制され、眠りが浅く、ほとんどが睡眠不足に陥っていいます。一時的ないびき程度は問題ありませんが、毎晩いびきかいたり「呼吸が止まっている」ときには身体機能にも注意が必要です。

 睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、無呼吸の間いびきが止まって、その後に激しい息や大きないびきで呼吸を再開するのが特徴です。習慣的にいびきをかく男性の3分の1、女性の5分の1程度が病的は無呼吸をもつと言われています。


肥満と睡眠時無呼吸

 睡眠時無呼吸症候群の患者さんの60〜70%は肥満しており、確かに肥満の多いグループです。しかし太っていなくても重症の睡眠時無呼吸の方もいます。また高度肥満の方が必ず睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。

 何らかの原因でノドが狭くなっている人が太ると軟口蓋や咽頭周囲に余分な脂肪が付き、ますますノドが狭くなって睡眠時に閉塞するようになるのです。従って、もともとのノドの形態的異常が軽い人は減量するだけで睡眠時無呼吸症候群ではなくなります。逆に鼻やノドの異常が高度であれば肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群になってしまいます。

睡眠時無呼吸症候群の合併症

 睡眠時無呼吸が進行すると体内が酸素不足になり、少ない酸素を体内に巡らせようとするために心臓や血管に負担がかかります。この状態が長く続くと高血圧、不整脈、狭心症や心筋梗塞、心不全、脳出血や脳梗塞、糖尿病など重大な合併症を引き起こします。

 また睡眠時無呼吸症候群は子どもにも見られます。子どもの場合、成長ホルモンの分泌が低下し発達障害、行動障害、学力低下などを招くことがあります。

睡眠時無呼吸症候群がもたらす社会的影響

睡眠時無呼吸症候群では強い日中の眠気が生じるために、交通事故や災害事故を起こす危険性が高まります。居眠り運転による交通事故率が健康な人の7倍と言われています。

 また、人格の変化、集中力の低下を起こすために社会的不適応の結果としての失業や家庭内不和からの離婚などをもたらすこともあります。

 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠が絡んで起きたとされる過去の重大事故として以下のものがあります。

・アメリカ・スターマイル島での原子力発電所事故(1979年)

・アメリカ・スペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故(1986年)

・ソ連・チェルノブイリ原子力発電所事故(1986年)

・アラスカ沖タンカー座礁(1989年)

・客船「スター・プリンセス号」座礁(1995年)

・JR山陽新幹線「ひかり126号」での居眠り運転(2003年2月26日)

アンケート・問診

 いびきや無呼吸の症状、日中の眠気の程度を調べます。

診察

 鼻、咽頭、喉頭などを診て、いびきや無呼吸の原因となるものがないか調べます。

検査

 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、当院では

入院せず自宅で簡単に行うことができる検査を行

います。検査の機械を腕に巻き付け、指先のセン

サーと鼻チューブをつけるだけです。ご自宅で一

晩これをつけて寝て、翌日機械をお持ち頂きます。

数日後に結果をご説明いたします。

 無呼吸の程度のみならず、血の中の酸素濃度やいびきの状態もグラフでお知らせできます。入院の検査と比べると非常にコンパクトな検査です。健康保険ももちろん使え、検査費用の自己負担額は2,160円(初診料や再診料、その他の検査料、

薬剤の処方料などは別途です)とそう高くありません。大人はもちろん、お子さんでも問題なく検査可能です。

 この検査の結果でさらに詳細な検査(脳波なども測定する)終夜ポリソムノグラフィー(略してPSG)が必要とされた場合は、検査可能な入院設備のある病院をご紹介いたします。

原因や程度によって適した治療法はさまざまです。それぞれの患者さんに適した治療法を十分なインフォームドコンセントのもと、ご一緒に選択いたしましょう。ちなみに代表的な治療法は以下のものがあります。

 

CPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸療法)

 睡眠中に鼻から一定の空気圧を送り込み、上記道の閉塞を取り除き、気道を確保する治療法です。ほとんどの睡眠時無呼吸症候群の患者さんに有効です。治療をはじめたその日から効果が期待でき、重症の患者さんでは第一選択になることが多いです。

 治療は通常、健康保険の対象になり、機械はレンタルされます。1か月の自己負担が4,380円(初診料や再診料、その他の検査料、薬剤の処方料などは別途)です。ただし健康保険で治療をおこなう場合、睡眠時無呼吸症候群の程度などが決められています。また、毎月必ず一回の通院が義務づけられます。

 鼻づまりが強い場合はCPAPの使用がうまくいかぬことがありますので、その場合は以下にしめすような鼻に対する治療を併用することがあります。

 重篤な副作用はありませんが、マスクによる皮膚のかぶれ、マスク周りの空気漏れによる不快感、口や鼻の乾燥などがあります。

鼻の治療

 アレルギー性鼻炎(通年性、花粉症などの季節性)、副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などがある場合は鼻の治療が必要なことがあります。治療の内容は飲み薬、点鼻薬、炭酸ガスレーザーによる下鼻甲介粘膜焼灼、鼻内内視鏡手術などから適切なものをご説明します。

ノドの手術

 扁桃が大きい、アデノイドが大きい(特に子どもさん)、舌の根っこが大きいなど特定の原因がある場合、手術により劇的な症状改善をみることがあります。しかし、手術で治るとは限りません。手術による改善の可能性があると思われる場合は、症例が多い専門的な病院をご紹介いたします。

歯科装置による治療

軽症の方の場合マウスピースをつかい下顎を固定することで症状が改善することがあります。マウスピースは歯科を受診し作成して頂く必要があります。2004年4月1日からは健康保険が適応されるようになりました。費用は、概算で自己負担で17000円弱のようです。

生活習慣の改善

・減量

  肥満が原因の場合は減量によりノドのまわりの余分な脂肪がとれ症状がよ

  くなることがあります。減量には毎日の運動量、食事の内容についての見

  直しと継続的な努力が必要です。

・体位の工夫

  仰向けで寝ると下向きの重力がかかるために、軟口蓋、舌根、喉頭蓋など

  が下がりいびきや無呼吸を生じることがあります。この場合、抱き枕を利

  用するなどして横向きにねると症状が改善することがあります。


・減酒

  就寝前の飲酒は、ノドの筋力を低下させ気道の閉塞を来しやすくなりいび

  きや無呼吸の悪化をきたします。寝る前の飲酒は極力控えましょう。

・薬剤の調整

  睡眠剤や抗不安薬などの薬剤はアルコールと同様にノドの筋力を低下させ

  気道の閉塞を来しやすくなります。しかしながら、自己判断での薬剤の調

  整は危険です。必ず医師と相談の上でおこなって下さい。

・禁煙

  喫煙は血液中の酸素濃度を低下させ、またノドの炎症をおこし睡眠に悪影

  響をあたえます。できるだけ禁煙をしましょう。

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